大阪市立大学同窓会(全学同窓会)

社会で自立して生きるということ

 

 北浦(嵯峨山)かほる (生科昭38卒)

 

 住まいの絵本館(NPO法人子どもと住文化研究センタ-) 活動を始めて5年になる。

 学生時代はデザイン大好き人間で、設計事務所に就職し元気いっぱい働いていたが、ある日今は故人の恩師から助手にならないかと誘われてふと気が変わり、古巣の住居学科の教員という、想定外の道を歩むことになった。

 90年代の末に、絵本に出てくる住情報を学生や院生の論文のテ-マにしたのがきっかけで、住まいの絵本の魅力にはまってしまった。市大退官後の私学勤務時代も、住まいの絵本を収集し続けて来たので膨大な量になった。建築関係の本はすべて処分したが絵本は捨てられず、小さな住まいの絵本館を設計して建てたのが始まりである。

 住まいの絵本を使って、子どもの空間や住まい方、住文化などを親や子ども達に、分かり易く伝えていきたいとメンバ-の、教え子や友人・知人と試行錯誤してきた。

 北海道~沖縄まで全国の夜間保育園や、数少ないが存在する北欧や欧米の夜間保育園の調査を行っていた現役時代、2歳までの幼児では、真夜中に迎えに来た親と子の雰囲気は一致しないが、3歳以上になると名前を聞かなくても雰囲気で親子関係が分かったことが印象に残っている。幼児の成長期における親の影響力の大きさを実感した。

 自立や自己主張を養育目標とする文化から考えると、日本の川の字就寝の問題点が見えてくる。
Bedtime-story分野の翻訳絵本にはイメ-ジ空間として表現された幼児寝室での、幼児の自己主張や自我獲得過程が様々に興味深く描かれている。 親は毎日就寝時にお話をしたり、本を読んでやることで、子どもとの信頼関係を築いている。欧米の親の養育目標は、子どもにself-esteem(自尊意識)を持たせ、自己主張出来るようにすることである。

 世界で学力トップクラスのフィンランドや、欧米の子ども達の保育や教育のシステムも、知識や技術を教え込むことよりも、主体性・自主性を伸ばすことに重点が置かれている。

 自己主張出来ずいつまでも幼い学生を目にすると、日本の教育システムや親が気になる。

 たぬき村もキツネ村も暮らし方は『みんなおなじ』1991とする日本の絵本に対して、『あそびにきてね』1993(米)の文化では、暮らし方はそれぞれの家で違っていて当然となっている。

 同調圧力の強い文化の下では自己主張がし難く、忖度する国民性が求められる。そのため自尊意識は、自ずと低くなっていく。

 個人が社会で自立して生きるということ、とはどういうことなのか? 住まいの絵本はそうした疑問を考えるきっかけにもなっている。

 今、北欧では主体的に自分の生活を組み立て、たとえサポ-トされる立場にあっても、自分の価値観を大切にし、社会とのかかわりを構築する生き方が模索されている。


「暮らしを豊かにする音」住まいの今昔館で、ワールドカフェの様子

グランフロント大阪ナレッジフェス(子ども)住まいの絵本プロジェクト
2019.01.30

同窓会報 有恒

  • 第16号
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