大阪市立大学同窓会(全学同窓会)

宮本憲一先生「日本学士院賞」記念シンポジウム・祝賀会について

中島 一彦
(法昭63年、法院平10年)

 本学の宮本憲一名誉教授が、大著『戦後日本公害史論』(岩波書店2014年刊)の功績で、「日本学士院賞」を受賞されることになりました。このたびそれを記念して去る2016年9月4日(日)午後、立命館大学朱雀キャンパスにおいて記念シンポジウム及び祝賀会が開催されました。
当日のシンポジウムでは、「水俣・福島・沖縄から日本の課題を考える-『戦後日本公害史論』に寄せて-」というテーマで3人の方から報告があり、その後パネル・ディスカッションが行われました。

 一人目の花田昌宣さん(熊本学園大学水俣学研究センター長)からは「水俣病公式確認60年の歴史的教訓とこれからの課題」として、水俣病患者数が熊本県と鹿児島県で7万人以上もいること、なぜ初発において対策がとられなかったか、なぜ出来事があるたびに患者数が増えるのか、水俣病問題の解決とは何か、水俣病60年を一人一人がどのように受け止めるのか、といったことについて報告がなされました。

 二人目の大島堅一さん(立命館大学国際関係学部教授)からは「福島原発事故から5年:戦後最大の災害にどう向きあうか」として、現在も9万人の離散者がおり事故の賠償や回復の費用は13兆円にもなること、なぜ原発事故が起きたのか、原子力開発の推進体制、福島原発事故とは何だったのか、問われる課題、維持可能な社会に向けて、ということについて報告がなされました。

 三人目の桜井国俊さん(沖縄大学名誉教授、沖縄環境ネットワーク世話人)からは「沖縄は問う日本の環境・平和・自治・人権」として、アセスメントは維持可能な発展を担保する重要な手法であるにもかかわらず、辺野古アセスはアセス制度を形骸化させ日本の未来を奪う違法アセスであること、ジュゴンが棲む辺野古は生物多様性のホットスポットであること、沖縄の基地密度は本土の500倍であるにもかかわらず基地を沖縄に押し付けてあとは思考停止状態であること、辺野古移設反対派の市長・知事・議員の当選という民意が示されているにもかかわらず、地方分権改革の意義を理解していない訴訟での異常事態、急降下する報道自由度と女性暴行などが繰り返され沖縄で人権が蹂躙され続けていることについて報告がされました。

 これらの報告をうけ、宮本名誉教授からは、かつての四大公害事件では企業に責任があったが、現代の四大環境問題:いまだに解決をしていない水俣病問題・史上最悪といえる福島の原発事故・多数の被害者が出ているアスベスト問題・沖縄最大の環境破壊である辺野古基地問題では、政府の責任が大きいこと、その解決策として戦後公害の歴史的教訓が生かされるべきであり、地方自治の本旨と三権分立の下での司法の役割が大きいことが述べられました。これまでの公害被害の救済の根拠となったのは人格権であったが、これからは予防が重要であり、環境権が認められるべきであること、現行憲法下でも環境権を認めることは可能であり憲法改正の必要性はないこと、フランスの環境憲章や(未定であるが)ドイツの環境法典が裁判によって具体化する環境権を考えるうえで参考になる、というコメントが寄せられました。

 パネル・ディスカッションでは、花田さんからは水俣病のことが子どもにすら語られていないこと、大島さんからは政府から無責任に飛び出す「責任」発言、桜井さんからは沖縄の人々に対するヘイトスピーチ、諸富徹さん(京都大学経済学研究科教授)からは四大環境問題に共通する「棄民」的思考についての発言がありました。また、フロアからの発言では、民主主義の観点からのアセスメントの重要性、沖縄問題のこれまでとは違ったアプローチ、現場の声の重さなどの発言がありました。

 シンポジウムの後には記念祝賀会があり、本学の除本理史教授の司会進行により、特別招待者の水田洋先生がご挨拶されました。宮本名誉教授の恩師でもあり日本学士院会員である水田先生からは、宮本名誉教授の今回の受賞経過などが語られました。乾杯のときには、久保井一匡弁護士から、大阪空港訴訟では、騒音などの生活環境侵害によって地域が破壊されている住民被害を環境権侵害とし、金銭賠償では救済できないことから差し止めを要求した経緯について発言がありました。また、関一研究者であるジェフリー E.ヘインズさんや、元大阪市長の關淳一さんなど、出席者からの祝辞が次々と述べられました。
日本は「公害先進国」と呼ばれ、四大公害裁判を通して公害対策がアメニティ確立の第一歩となったのであり、宮本名誉教授が提言されるような環境保全の地域再生の道を模索し続ける意義を再認識させるシンポジウムでした。

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宮本憲一先生ご夫妻の横には、宮本先生恩師水田洋名大名誉教授(97歳)

同窓会報 有恒

  • 第17号
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