大阪市立大学 理学部同窓会

UW Advance Manufacturing & Innovation Program 報告書

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 まず、今回自分が参加したUW Advance Manufacturing & Innovation Programに対して、援助金を出して頂いた事、心より感謝させて頂きます。それでは、これから今回の活動に対する自分の体験を通して感じた事、そしてその結果考えた事を述べていこうと思います。

 今回、このプログラム前、自分はどういった目的を持ってこの活動に臨み、どう行動すればその目的が達成され、どういった結果が得られるのかという事をずっと考えていました。しかし、どう考えてもこれといったたいした事が浮かばなかったので、自分は、自分が現地で興味を持った事を全て記録し、自分で解決できないものに関しては現地の人に解決するまでとことん聞いてみようと言う目標を立て、それを実行しました。この結果、自分の中で2つの大きな考え方、見方の変化がありました。 

 1つ目は、アメリカの学生の勉強への姿勢。これは、かなり自分にとっても衝撃的なものでした。留学前から、アメリカの大学生は本当に勤勉で勉強に対してとても真面目である、と言う事は聞いていたのですが、自分は真面目な学生が多いと言うだけであり、少しそれは話が盛られているのではないかと疑っていました。ですが、今は違います。学生のほとんどが自分の勉強に対して本当に真面目で昼休憩時のカフェエリアですら、学生たちが自分の本や電子機器を用いて何かを研究していたり、友人たちと議論していたのです。日本の学食でよくみられるようなゲームをして遊ぶ、友人と話してばかりいる、などの光景は僕がみた限りでは、ほとんど見受けられませんでした。個人的に気になったので、周りにいる学生、友人になった現地の学生、個人的に訪問させて頂いた教授、教育アドバイザーの方などできるだけ多角的な視点で、本当にアメリカの学生たちはこんなに真面目な学生ばかりなのかと尋ねてみました。ですが、返ってきた答えはいつも同じで、“もちろんです。”でした。勉強をする理由としては様々ではあったものの、自分の勉強に対して必死に努力すると言う結果はどれも同じでした。大学側もこの学生たちの姿勢に応えるために、例えば、学生たちがどこでも議論できるように机と椅子、そしてホワイトボードを開いたスペースに配置したり、図書館を24時間開放したり、先生が学生をいつでも助けられるように、とてもフレンドリーな関係を日頃から意識されていたり、会議室を24時まで使えるようにしたりと、様々な取り組みがなされていました。環境、そして生徒たちの考え方の姿勢、この2つが要因なり学生たちの学力向上につながっているのだなと考えました。

 ここで、僕の所属する物理学科とウィスコンシン大学の教育における違いを考えてみますと、学生同士が気軽に議論できる場所があまりに少ないと言う点で違いがありました。先生たちの授業の質や生徒への接し方はウィスコンシン大学の物理学科とはほとんど変わりないと思います。ですが、僕たちの理学部棟では生徒たちが互いの考え方を共有できる場所があまりに少ないのではないかと今回の研修を通して考えました。自分が取り組んだ問題を違う視点からの考え方を含め再び考え直してみる、この過程は物理学においてとても重要な過程であると自分は思います。僕も友達と自主ゼミを通して、議論する事はあるのですが、議論する前に申請があったり、場所を確保できても大きなホワイトボードなどが使えないなどの問題がありました。

 ですので、僕は理学部棟の入り口にある机1つに対して、1つホワイトボードをつけてみてはどうかと考えました。図々しい提案かとは思いますが、一度考えて頂ければ幸いです。

 2つ目はコミュニケーション方法の違いです。自分の今回の目標は、自分の興味の持った事について何か気づきを得るといったものでありましたので、僕は普段からサッカーをしていますので、アメリカのサッカーは日本とどう違うのかと言う興味を持ち、周りでサッカーをしていた人達に自分もサッカーに混ぜてくれないかと頼んでみました。時間の都合上、チャンスは2回しかなく、2回しか頼めなかったのですが、2回とも異なるグループから、もちろんいいよ、と了承されました。この行動から得られたものは、結果的に日本とアメリカのサッカーの違いではなかったのですが、とても重要な結果が得られました。

 まず、僕は、年齢、人種、性別全て異なる所で初めてサッカーをしたのは今回が初めてでした。そして、僕の英語の能力ははっきり言って高いものではなく、話されていた言葉はほとんどわかりませんでした。ですが、そんな中でも1つわかった事があります。それは相手が今どんな気持ちでいるかと言う事です。言葉はほとんどわからなかったのですが、これだけはなぜかしっかり分かりました。そして、この原因が分かりました。それは相手への尊敬の心です。常に相手を敬い、相手が今どんな気持ちでいて、何をして欲しいのか常に考えながら動いていると相手の感情がどんどんわかってくるのです。チームメイトや相手チームのメンバーが良いプレーをした時は、その喜びを分かち合い、ミスした時などは励ましあって一緒に頑張る。そうしていると、言葉はほとんど通じていないはずだったのに、プレー中嫌な空気は1つも流れず、ゲームが終わってからもとても良い雰囲気で過ごす事が出来ました。こんな経験は初めてです。そして、これこそがコミュニケーションで最も大切な事なのだと、サッカーを通して教わりました。日本では言葉やジェスチャーに頼らず、空気を読んで相手の感情を考えると言う事がよくあります。ですが、アメリカでは違います。感情を表に出し、常に相手への尊敬を忘れない。これこそがコミュニケーションの最も根底にあり、かつ最も大切な事なのだと実際の経験を通して考える事が出来ました。この事は、僕の日本での今後のコミュニケーションの仕方を大きく変えてくれると確信しています。

 最後に、このプログラムの経験から得られ考えた事をまとめようと思います。それは、常に周りを観察し、興味を持ったものに対しては、自分が実際にそれを実行し、自分なりの考えを構築した上でそれを誰かに伝えると言う事です。僕は、今回ウィスコンシン大学でプラズマの研究をしているClint Sprottと言う名誉教授に、物理を考える上で一番大切な事は何ですが、と尋ねました。それに対して、彼は「君は楽器を演奏するかい?楽器を演奏する時、楽譜を見るでしょ。ここで質問、演奏の練習をしないで楽譜ばっかり見てその楽譜を覚えようとしている人が実際に楽器を演奏した時、どうなると思う?そう、楽器を演奏する事が出来ないんだ。物理もこれと同じなのだよ。実際にある問題の解法をいくら眺めてもいても物理を理解する事は出来ない。実際に君が手を動かして、君の手でもう一度その問題を解く必要があるんだ。これが一番大切な事だよ。」
と、答えてくれました。自分の頭で理解し自己解釈をする大切さと言うものを教えられた気がします。

 そして、ここで僕が言いたかったのは、この考え方は僕の生活のほとんど全てのことに対しても当てはまると言うことです。自分が興味を持った事を、実際に自分もやってみて、自己解釈する。この過程は本当に大切なことではありますが、ほとんど実行に移せなかったのが現実です。ですが、今回の機会を通して、日々何かに挑戦しフィードバックし次に繋げる、この過程の大切さをもう一度しっかり考える事が出来ました。この考え方を今後の自分の勉強にもっと活かせるようにしていこうと思います。

 今回自分にこのような機会を与えてくださった周りの人達、そしてそれを援助くださった理学部同窓会の皆様に感謝をし、ここで報告を終わりたいと思います。

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