小娘からオバハンに | |
伊 藤 友 子 | |
今の私の課題は、「光子の立ち方」だ。座るほうは、足をくずして、体をのけぞらしていると不思議に暑くけだるい感じが自分の中にわきおこってきて、バタ屋のおかみさんらしく「(主人は)女と逃げたとです」などというセリフが何のためらいもなく出てくる。ところが、この光子がいったん立ち上がって歩くとき、立ち止まって親雄と話すときになると、もうバタ屋のおかみさんはどこかへ消えてしまって、十九才の小娘が無理なセリフを声をふりしぼって叫ぶことになってしまう。これはやはり光子の歩き方、立ち方の型が出来ていないからだと思う。三十五、六のオバハンは歩くとき足を一直線の上に進めずに、二本の線の上を進めるだろうか。とか立つときはやはり足をひろげているのだろうか、腰を少しかがめ上目遣いでジロリと見たら光子のいやらしさが出るのじゃないか、いろいろ考える。あと公演までわずか、この間に、光子の立ち方、歩き方を何とかものにしようと思っている。
(パンフレットより) | |