その喜びそしてその不安
―創作劇上演に際して―

山 脇 正 邦


とにかく、私たちは喜びと誇りに胸がふくらんでいます。そして、とにかく、私たちは不安に胸がふるえています。私たちの仲間がともに若き世代の哀歓を描いた学生創作劇を私たちの演劇部が上演するのは、この「自殺プラン」でもう10回に及ぼうとしています。そしてその度毎に、私たちの胸はふくらみ、そしてふるえるのです。新しい舞台を私たちの力で創り出すという喜び。私たちがみた真実を精一杯の努力で表現しようとする誇り。幾多の著名な作家の、著名な作品のなかにあっては、それはあまりにも未熟で、あまりにも小さいものであるのは当然です。しかし、それでも私たちの胸はふくらむのです。無限の感激と、新しいものを私たちの手で創り出そうとする測ることのできない若さに、私たちの胸はふくらむのです。私たちの仲間が創り出した作品とともに、私たちは考え、悩み、喜び、怒り、泪することに、私たちの若さと情熱が美しい、しかも悔いのない青春を彩ることを信じているのです。そして、私たちの胸は不安ににふるえるのです。新しい舞台、新しい人間、それを創る出すということが私たちの力で本当にできるのだろうか。私たちの信じた真実が、舞台の上でからまわりをして観客のみなさんの頭上を通りすぎてしまうのではないか。超現実、若き日の幻影などとうそぶかれるのではないだろうか。私たちの力で、新しい人間像を、私たちの真実を表現できるのだろうか。私たちは、つい不安に胸がふるえます。公演の日が近づくにつれて、この喜びと不安は、はげしく私たちの心に去来するのです。喜びと不安と。それが今の私たちの姿です。
だが、とにかく、私たちは信じています。いや、信じようとしています。新しいものを創り出すには、幾多の不安や苦しみを打ち破るだけの勇気を持たねばならないのだということを。少なくとも、それを可能にするのが、私たちの若さであり、情熱であるということを。そして私たちは信じています。いかに失敗しようと、いかに挫折しようと、私たちの若さと情熱を打ち込む気魄だけは失ってなならないのだということを。それが私たちの青春のあかしなのだということを。
とにかく、私たちは喜びと誇りに胸がふくらんでいます。そして、とにかく、私たちは不安に胸がふるえています。

大阪学生演劇祭パンフレットより





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