―稽古場の片隅― | |||||||
"時" | |||||||
酒井 芳樹 | |||||||
愚人:我々がもし時間という存在を打ち忘れることが出来たらな 狂人:それでは暇になりすぎる! 愚人:では何故そうしないのか 狂人:多忙だからだ!しかし、あ―時間のない空間に住みたい 賢人:それは無理だ 狂人:どうしてだ!どうして無理なのだ! 賢人:生きているからだ。生きてる限りお前はつきまとわれるのだ! (〃):そして、お前の生命と共に二度と帰らない…… (〃):だがお前は一刻と一刻とそれに近づいているのだ嬉しいか、ハハ………。 | |||||||
山田 安 | |||||||
「時が過ぎて、私たちは永久に去ってしまい、私達は忘れられる。けれども私達の苦しみ、私達のあとに生きる人達には喜びにかわっていく、幸福と平和がこの世にやってくる。もう少ししたら、私達にも解るような気がする、何の為に私達は生きるのか、何の為に苦しむのか……もしわかれば、もしわかれば!」こんな作品を読んだことがある。
多尾 嘉子
'Time is money'なんと適切な言葉ではないか。人はよく「時が全てを解決してくれる」と云うが、ここでちょっと考える必要がある。我々感情の動物である人間は、行動、思考の面に於て、複雑な感情に支配され動きのとれなくなることがある。そして時間の経過によって救われた様な気持にたびたびなるものだ。これ程危険な、もったいない浪費があるだろうか。平均六十何才という短い一生だ。自分自身の力を働かしてがっちり進もうではないか。若い世代の我々は暗闇の中にも一筋の光明を見出し時に先立って!!!
西坂 博
「開幕三分前ッ」舞監氏が叫ぶ。パネルとパネルが合ってくれない。柱の真中に一寸程隙間が出来ている。打ったガイが又外れる。カンカン、バリッ、またやったな、と思うとこちらでピリッ、もう完全に頭に来ている。金槌の音がセコンドの刻みに重なり合う出道具が置かれた。プロンプターが、懐中電灯と台本をひっさげてゴソゴソと何処かへ這込んだ「一ベルいくぞッ」この声までの時の経つのが早いこと!
小田切 成明
黙って、黙ったまま過してしまうのがほとんどだった。何か胸熱く息づまりながら―胸の内を声にするのが、とても惜しい気がして、何時までも黙ってスプーンの模様を……その時と変ったってところもないのに、なんと息苦しい、この息使いから心の内をさぐろうとするかのように、先刻からその目は口のあたりに……離れず、離れず、しばらく―。
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"音" |
花垣 厚實 |
余命短い学生生活、見通しのつかぬ将来、いや俺だけではあるまい 動きのとれなくなった、追いつめられた、俺の周囲 いや俺だけではあるまい。どす黒い、不気味な雲が、俺達一人一人の心の中へ 人間をだんだんむしばんで行くつかめないもの 卑屈にし、ゆがめてゆく、片輪にするつかめないもの 倉田に? 末川に? 俺が? そんなこと……… 時々………足が浮く?馬鹿な! そおら、俺はこうして大地に立っているぞ。 くいしばって大地をふんずけているぞ。 将来の不安。 もやもやした焦燥、 その蠢動、 それでも俺は歌う。 大地に向かって、 力強い未来をつげる足音を聞きながら。 |
淡 海 梁(水上 担) |
流れくる音 (ありふれた云い方だ、馬鹿めが) 一点に固着して、時と共に去る。 いや、観ている奴の方が彼等から去る。 彼は何も知らずに、ただ固着して、偏執の極数が 少しは未練を残して尾を引き乍ら。そもそも音とは、空気の縦波振動の圧力で振動数、振幅、波形を有し人体の聴覚器たる耳に入っては、鼓膜を振動させ、蝸牛道に入って…… 丁度、制限字数になった。 諸君の心に訴える音も。 |
西尾 雅一 |
零時をすぎて、大都会が眠りに落ち込む頃、机の前に座って、じっと耳をすませると、どこからか、かすかな音がしてくる。 ―何の音だろう―僕は一心になる、やがて、僕は知るのである。それは胸の奥底から聞こえてくる音、魂が鼓動する音なのだと僕は考えるのである。 ―この音を何よりも愛そう― |
小田切 成明 |
「音」が遠く消えてしまってから「色」もそのすべてが混ざり合って、まざりあって、世界は灰色になってしまった。街角の新聞売り子が灰色の紙を前に口をパクパク。灰色の明かりと云うのはどうだ。!すでに思想と云ったものはこの沈黙の中では存在しなくなっている。 みんな!あの水族館の水槽を訳もなく泳ぎ廻っている灰色の魚が自分だと考えてみろ。 |
| (パンフレットより) |