ら く が き | |||||||||||
幕の内側で………………小田切成明 | |||||||||||
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何も云えない。今、その瞬間、幕の下がりようが非常に遅く、又は余りにも早く感じながら急に起こった拍手の中に完全に包まれてしまっている自分。今までの苦労のすべてを、この温かい拍手の中にもう一度味わい返すのだ。一つのことをやり終えた満足と、何処かに残っている空虚さに、この小さい心をまかせてしまって、今は何も云えない。幕の内側で演技者の顔をお互いに眺めやった時、どれ程その顔が晴々しく輝いていることか、幕をへだてたその興奮がじかに真実なるものこの賛歌として胸に迫って来る。最後の姿勢のままどうしてもどうしても動くことの出来ないのは―? "ドウラン"を塗りつけた顔があちらの隅でにこりと笑っている。それだけで十分に苦労はつぐなわれた。だが、この静かに下りた幕の内側で僕は一言も話し出すことが出来ないのだ。
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愛するルイーズ……………高谷恵美子 | |||||||||||
一度自分が考えて見てそれを実際に表現する時、誰しもその瞬間まったく自信を失って終う。 卒業するまでに何かやってみたい、はからずもそれがこんな難しいものをやろうとは。しかし私は愛しているルイーズを。 この愛するルイーズになれたらと願っています。 そして愛する限り私は努力するでせう。 「君の名は」を辧ず…………関口 晃宏
春樹と真知子は心から愛し合って居る。然し彼等の恋は結ばれ様として結ばれない、二人に意志以外に働く力によって絶えずそれは妨げられる。 僕達の生活も又此の様である。平和を願うのになんだか戦争の不安に襲われ、勉強仕様と思うのにアルバイトに行かねばならず、就職仕様と思うのに満足な職はない。僕達の望みは形こそ違え春樹と真知子の愛である。 誰でも愛の美しい結果を願う。然し二人の愛はあたかも僕達の望みの如く、いやそれ以上に今にも成就しそうで、され難い。「あつ、あそこまで行って・・・・」。そして「せめて二人の愛たりとも・・・・。」と我が身をつまされる思いで二人の愛の成就を願う。此処に「君の名は」があの様に受けた原因がある。云い換えれば「君の名は」こそ僕達日本国民の姿である。求めつゝ、叫びつゝ遂げられぬ思いに泣いて居る。 僕は「君の名は」ありゃミーハー趣味だ芸術じゃないとか笑い飛ばす人は日本の文化を崩壊に導く敵だと考える。 「君の名は」が悪いのなら僕達の前に之と代って之以上に正しく楽しめる物を提示すべきだ。でないと僕達は承知出来ない。最後の楽しみまで奪うのかと・・・・。 僕は菊田一夫氏に学ばねばならぬ所を多く発見する。 とめどもなく思うまゝの記………櫻井宗和
ええ、そうなんです。彼は窮極まで押し詰められて生と死の間を彷徨していたのです。憤怒が先に立って、理想に対する信念の支えのない興奮に煽られたんです。追いやられたドン詰りの壁からは撥ねかえしがあるものなんですね。僕はそんなルコックを演って"ルコックよ頑張れ"という励ましが自分の中に湧き起るのを、何度も、何度も感じました。ラポポルトは戯曲の中にも役の中にも"一本の赤い糸"を見出し、採用し、更に舞台に轉移させると云っていますが、僕達は歴史性のある社会的推移の中にもその"一本の赤い糸"を見出し理解し自己の全生活にそれをみなぎらせなくてはなりません。それこそが、僕がルコックを全うすることであり、現実に僕達人間、特に青年が、さまざまな流れに対処するもっとも望ましい態度ではないでしょうか。そして又社会的に課せられた義務にちがいありません。それは理解してから舞台にもって上がるまでと同じように難しく、又リヴワールの云うように勇気のいる事です。
小さな抵抗………………池田克彦
どんよりと鉛色に曇った暗い、重い空気、丁度台風の直前に感じられるあの不気味なまでの静けさ・・・・、そんな空気をふと自分の周囲に感じる。両陣営では日夜を争うようにして殺人兵器の製造に莫大な資本をかけ、神聖な労働の汗は殺人の悪臭に化せんとしている。無気力な大人たちは未来を否定することさえ出来ず、たゞその日、その日の享楽をむさぼっている。時代を背負う僕達は決してかような空気に没してはならない。未来を信じ自己のすべてをその暗黒の壁にぶち当て、もれ出る一条の光を求めて泥沼にアガキ、這い出る為の抵抗を行う。彼こそ真の勇者であり真の人間美ではなかろうか。しかしロマンチストであってはならない。常に現実を静観し、理性で物事の処理を行う。日本の国際的地位の重要性を再認識し、強大な力を持って一歩一歩前進する。歌の好きな者は歌を歌い、文学を愛する者は自らの筆をとり、演劇を趣味とする僕らはその舞台から訴えよう、よりよき未来の為に。たゞ"前進"の二字あるのみ。
ノスタルジア………………山田 安
新世界。この言葉を聞いて、凡そ一度でもここに足を踏入れた事のある人なら誰があの一種異様な雰囲気を思出さずにいられるだろうか。大阪のカスパと云ったようなものを私は感じるのである。点滅するネオンの明り。プンと鼻を突くホルモン料理の臭い。一日の仕事の疲れを癒す為に、一杯のチューを求めて集る労働者たち。そんなものに私は限りない愛着を感じるのだ。この雑踏の中に、私は盛上がる意欲を感じる。自由を発見する。 孤独なんてものに私は堪えきれない。静けさの中にとけこむ事も出来ない。静寂をいらただせる。孤独は私に詩を興えてくれない。電車の騒音の中でこそ書物をひもとく事が出来、串カツ屋の油の臭いにこそ詩情を感じる事が出来るのだ。 (パンフレットより) | |